ハワイの本格寿司2選|ハワイで働く日常
2023年04月11日
投稿者:Yuka さん
ハワイの超予約困難な鮨店
2023年03月25日
ハワイへ旅行で来る度に予約を取ろうとしたのに、一度も予約を取ることができなかった超予約困難な鮨店がワイキキのリッツカールトンにあります。
すし匠(Sushi Sho)。東京、四谷にある鮨の名店「すし匠」の大将、中澤さんが日本で獲れる質の高い鮮魚が海外に流失していく実態を憂慮して、逆転の発想として北米やハワイで獲れる鮮魚でも江戸前の本物の握りを出すことができる、まさに江戸前鮨の実力を世界に伝えるべく、満を持してハワイにオープンさせた鮨店です。
今回はご縁があり、東京にいる頃によくお世話になっていた西麻布の鮨店の大将が、ご自身のお店を畳んででもすし匠で中澤さんと共に鮨を究めたい、ということでハワイのすし匠で働かれていたので、空いている席を取っていただくことができました。
提供されるのネタは、ハワイのローカルもの、カナダなどの北米、そして東京の豊洲から。
銚子の金目鯛の身は小ぶりな刺身に、皮の部分は炙って握りに。皮まで使い切るサステナブルな姿勢が素敵です。
春子鯛(かすごだい)という鯛の稚魚のおぼろじめ。
鮨といえばガリを欠かすことはできませんが、ここもハワイならでは。Heart of Palm(ハートオブパルム)という、椰子の木の芯の部分を甘酢漬けにしたものを生姜の代替として使っています。筍のような食感がとても面白いです。
蛸は東日本の蛸の名産地、佐島から。
余談ですが、すし匠を訪れる数日前にハワイ入りした連れがたまたま佐島の海岸沿いに住んでいて、ハワイに発つ日の朝に漁師さんが海で蛸を獲っているのを自宅のテラスから見ていたそうです。もしかしたらその蛸も同じ便でハワイに飛んできたのかと思うくらい運命的な再会を果たした一品でした。
ハワイのタロイモを練り込んだ胡麻豆腐。通常の胡麻豆腐よりもねっとりとした食感が特徴的です。上にのっているのはニシンの卵。
のど黒の焼きもの。上にのっている粒々としたものはフィンガーライムの果肉です。
一見スパム握りのようにもに見えますが、あん肝の握り。甘辛く炊いたあん肝を軽く燻しています。
京都の舞鶴から来たマグロ。定番の赤身のづけには和芥子をのせて。
ウニはサンタバーバラから。ウニといえば北海道に秀でるものはありませんが、豊洲市場でも、時季によってはその北海道のウニをも凌駕するものがサンタバーバラからやってくることがあるそうです。
ハワイで獲れるオノという魚も握りに。オノは日本ではカマスサワラと呼ばれる、鰆に似た味わいの魚。ほんのりピンクみがかった色味が見た目にも美しい、ハワイを代表する魚のひとつです。
江戸前の鮨屋で大トリを務めるネタといえば、穴子。それをあえて穴子ではなく、食感の似たハワイ近海のタラにタレを塗った握り。穴子の、口の中でほどけるように柔らかい身と比べると繊維質ですが、タレとの相性も良く、穴子の代役をよく務めていると言えると思います。中澤さんの仰る、ハワイ近海の魚でも江戸前の鮨を握ることができる、という顕著な例はこのネタかもしれません。
数あるネタの中で個人的に特に面白いなと感じたのは、10日間熟成させたトロ。中トロをサラシにまいた上に水分が入らないよう密閉させた袋に入れて、氷点の氷水の中で10日間じっくりと熟成させたもの。見てわかる通り、断面はまるで火を通したかのように茶色く変色していて、見た感じの印象は肉寿司のよう。味わいも普通の中トロのような脂の甘みと赤身の酸味というよりは熟成肉のような野性味が感じられて、説明されずに食べたらマグロとはわからなかったかもしれません。ちなみに、お腹に余裕があれば食べてみたかったのですが、コースとは別の追加オーダーで、熟成大トロもありました。
私は今まで海外で鮨を食べることに抵抗があったのですが、すし匠は、職人の腕が確かであれば、どんな土地の海鮮も東京に劣らぬ極上の鮨になり得るということを体現してくれていて、このような職人さんたちが海外で活躍してくれる限りは、Sushiというものが海外でも誤解されることなく浸透していくのではないでしょうか。
ただ、実際のところは、素材の持ち味を活かすのではなく、キャビアなどの高級素材を使ってどれだけ盛っているように見せるか、悪く言えば素材の粗や腕の足らなさをごまかしている鮨屋が全米には(世界的にも)まだまだ多いように見受けられます。その状況を打破し、真の江戸前の鮨をアメリカに伝えるために、すし匠の中澤さんはハワイを離れ、次なる舞台をニューヨークにと定めています。今夏ニューヨークにオープンするすし匠がニューヨークの鮨シーンをどう変えていくのか、今から楽しみでなりません。
すし匠 / Sushi Sho
THE RITZ-CARLTON RESIDENCES WAIKIKI BEACH
383 Kalaimoku St, Honolulu, HI 96815
https://www.ritzcarlton.com/en/hotels/hawaii/waikiki/dining/sushi-sho?scid=bb1a189a-fec3-4d19-a255-54ba596febe2
Omakase by Aung(オマカセ バイ アウン)
2023年04月11日
前回のコラムで、ハワイの素材を使って正統派の江戸前鮨が食べられるという話をしたので、今回はその比較として取り上げたいお店があります。件のすし匠の中澤さんは、素材の良さを存分に引き出すためにいかに引き算をするかが江戸前鮨の本分だとメディア等に語っていますが、鮨とは正にその通りだと思います。そういう意味では、今回紹介するお店は良い意味でその対称に位置しています。
Omakase by Aung(オマカセ バイ アウン)はWaikikiの東側に位置するKapahulu(カパフル)エリアに昨夏誕生した新星の鮨店。KapahuluはLenard’sやOno Seafood、Rainbow Drive-inなどガイドブックにも載っている有名なお店がたくさんあって、バスや自転車で行ったことのある方も多いのではないでしょうか? 銀座おのでらも同じKapahuluにお店を構えていますよね。
鮨を握るAungはタイ出身の27歳、サンフランシスコで鮨職人としてキャリアを積んだ後、昨春にハワイへと引っ越してきたばかりなんだそうです。
コースは店名の通り、15品のおまかせコース$130。
サシの入り方の美しい大トロ
金沢から届いたのど黒。軽く炙った後にキャビアを添えています。
千葉から届いた金目鯛は桜のチップでじっくりとスモークさせてから最後に皮目を炙っています。
トリュフをのせたサーモン
ウニは北海道から。
デザートは新作だという、冬トリュフのアイスクリーム。
結論としては、$130ドルでこれだけのクオリティの鮨が食べられることが高コスパすぎて驚きでした。すし匠中澤さんがおっしゃる通り、引き算するのが江戸前鮨の美学なのは間違いないけれど、Aungの鮨が自身のすしはオルタナティブだと思っている限りは、足し算する面白さ、むしろかけ算する面白さももあると思います。こういうジャンルだと割り切ってしまえば、下手にスキルのない東京の鮨職人の出す鮨よりもよっぽど良かったし、掛け合わせ方によっては、江戸前の正統派とは異なる新境地のテイストが見つからないとは限らないと思います。
海外の鮨で問題なのは、亜流の鮨、異端な鮨を出している店が鮨の本流である、あるいは正統派であるという顔をしていること、江戸前鮨を知らない海外の客がそれを本物の鮨だと思い込まされている実態があることだと思います。そう言う意味では、自分の店は正統派の鮨店とは違うって言い切っているAungはむしろ潔くて、存分に評価できると思います。
ちなみにこのお店、現在はまだアルコールはB Y O D(Bring Your Own Drink)=持込制なので気をつけてください。まだ新しいお店なので、アルコールを提供するライセンスが取得できていないそうです。だからこそ、日本酒でもワインでも自分の好みのドリンクを持ち込めるのが魅力でもあります。万が一忘れても、裏のガソリンスタンドで久保田をはじめとした日本酒や焼酎、日本のラガーも取り扱っているので安心です。
現在は割と予約が取りやすいのですが、Honolulu magazineでも表紙を飾っているし、この勢いでメディアに取り上げられていけば来年辺りには予約が取りづらくなってくるんじゃないかなという予感がしています。予約が取りづらくなれば、将来的にはコースの値段も上がってくる可能性もあるし、訪れるなら今がまさに狙いめのお店です。
今回のコラムを担当したのはYukaでした。
Omakase by Aung
567 Kapahulu Ave, Honolulu
https://www.omakasebyaung.com/